2013年1月4日金曜日

鬼平犯科帳の麻布近辺

現在もファンの多い池波正太郎の小説「鬼平犯科帳」ですが、麻布周辺が舞台となっているタイトルも少なくありません。これは私見ですが、麻布周辺は、町家や商店を支配する町奉行、寺社を支配する寺社奉行、農地を支配する代官などが複雑に入り組んでいたため、盗賊や強盗が管轄以外の場所に逃げ込めたため、物語の作成が容易であったためではないかと想像しています。

それら、麻布周辺にまつわるお話をご紹介します。


麻布周辺が登場するタイトル
タイトル 原作 文庫 テレビシリ-ズNo. 放送 場所
お雪の乳房 兇剣 二巻 白鸚版・吉衛門第5版 1970.1.6・1992.4.28 芝田町~金杉橋
麻布ねずみ坂 兇剣 三巻 白鸚版・吉衛門第7版 1970.4.21・1996.8.21 飯倉片町鼠坂
おしゃべり源八 血闘 五巻 吉衛門第4版 1993.5.12 一ノ橋
礼金二百両 血闘 六巻 白鸚版・吉衛門第7版 1972.3.23・1997.4.23 広尾・愛宕山
本門寺暮雪 追跡 九巻 錦之介版・吉衛門第2版 1982.10.5・1990.12.19 芝二本榎~三ノ橋一本松
消えた男 追跡 十巻 吉衛門第5版 1994.4.27 愛宕山・芝口橋(新橋)
密告 十一巻 吉衛門第8版 1998.4.29 芝西の久保
夜針の音松 一本眉 十三巻 笄橋
赤い空 雲竜剣(長編) 十五巻 吉衛門第5版 1990.10.3スペシャル 芝二本榎~将監橋
剣客医者 雲竜剣(長編) 十五巻 吉衛門第5版 1990.10.3スペシャル 芝金杉
見張りの糸 影法師 十六巻 芝田町
助太刀 助太刀 二十巻 芝二本榎~伊皿子~相模殿橋暗闇坂
おしま金三郎 助太刀 二十巻 錦之介版・吉衛門第5版 1980.5.20・1992.4.15 麻布田島町
二度ある事は 助太刀 二十巻 三田赤羽橋
助太刀 二十巻 芝高輪~品川
瓶割り小僧 春の淡雪 二一巻 吉衛門第8版 1998.4.22 神谷町~鼠坂
麻布一本松 春の淡雪 二一巻 錦之介版・吉衛門第4版 1981.7.21・1993.4.21 一本松本村町広尾
春の淡雪 春の淡雪 二一巻 錦之介版・吉衛門第2版 1982.10.12・1991.3.13 芝西の久保
男の隠れ家 春の淡雪 二一巻 聖坂三田~札の辻
座頭・徳の市 迷路(長編) 二二巻 吉衛門第8版 1995.9.20スペシャル 鼠坂
托鉢坊主 迷路(長編) 二二巻 吉衛門第8版 1995.9.20スペシャル 増上寺・赤羽橋
麻布暗闇坂 迷路(長編) 二二巻 吉衛門第8版 1995.9.20スペシャル 善福寺門前~仙台坂暗闇坂
引鶴 迷路(長編) 二二巻 吉衛門第8版 1995.9.20スペシャル 暗闇坂



この表からも麻布近辺が登場する物語が本当に多い事がわかります。これは実在の長谷川平蔵宣似(のぶため)も当初、火盗改めの助役(すけやく)であったため(明和8[1771]年10月17日~翌年3月5日までで、それ以降は7年間本役を務める。)管轄区域が日本橋より南で、麻布辺も当然含まれました。また小説中での鬼平は、恩人の息子で旗本の細井彦右衛門を屋敷のある芝二本榎に度々訪れています。この道程で麻布を通ることが非常に多いことも麻布が鬼平に登場する要因の一つかと思われます。
また御殿医の井上立泉、神谷町の砥師竹口惣助などの訪問も麻布の登場に一役買っています。 そして、作者の池波正太郎が最も多く登場させている麻布の場所は、東麻布の「鼠坂」だと思われます。