今回は東京朝日新聞(現、朝日新聞)に掲載され後、「日本怪奇物語」と言う本で「夜半に室内の道具が動き出して百鬼夜行」として掲載された話をご紹介します。
1890(明治23)年九月上旬、芝区三田四国町二番町へ引越してきた宮地一家(主人48歳、長男7歳、長女10歳)3人は、引越した当初は平穏な暮らしを営んでいました。しかし10月10日頃から夜になると不思議な事が起こりだしたそうです。
まず部屋にある煙草盆、火鉢などがゆらゆらと自然に動き出し、天井に吊り上げられたり、台所の米びつや、すり鉢、釜、茶碗などがまるで生きている様に踊りだしたりしました。またある時は、家族が寝ている天井から米や灰が降ってきたりもしました。こんな事がしばらく続くと子供達はすっかり怖がってしまい父親もあまりの怪奇さに困り果て、今度動き出したら切ってしまおうと枕元に包丁を置いて寝ると、その包丁までもが部屋を飛び回り始めたそうです。ほとほと困り果てましたが、怪奇現象はなおも続き、縁の下から按摩の笛が聞こえたり、戸や障子がリズムをとって鳴り出したりしたそうです。
仕方が無いので父親は高輪警察に訴え出ると共に、祈祷師に御払いを依頼したそうです。
しかし、残念ながらその結果どうなったかは記されていません。