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開運山来迎院 光福寺 |
切支丹遺物を探して高輪にある開運山来迎院 光福寺(港区高輪3-14-4)を訪れ、切支丹灯籠を撮影した際に「幽霊地蔵」という地蔵尊があるのを知りました。
「子安栄地蔵尊」が正式名称ですが、その地蔵尊の姿から通称:幽霊地蔵と呼ばれ平成四年に港区の有形民俗文化財に指定されています。「港区文化財のしおり」によると、
江戸時代、高輪二本榎のこの辺りは寺町として栄え、門前町も賑わっていました。この門前町の中の一軒の飴屋に、毎日一組の母子が飴を買いに来ました。雨の日でも傘もささずに来るこの親子を不思議に思った飴屋の主人が、ある日後をつけてみると寺の中へ入っていきました。数日後、今度は住職と共に後をつけて行くと、この地蔵の前にたどり着きました。住職がこの地蔵を毎日きちんと供養するようになると、その親子は現れなくなりました。また、この地蔵は、品川沖湾からあがり、死んだ母親に代わって子供を育てたという話もあり、現在は子安地蔵として信仰されています。港区に残されている数少ない昔話のひとつです。登録(平成4・3・30)
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子安栄地蔵尊
通称:幽霊地蔵 |
との逸話を残していますので興味を引かれ少し調べてみました。
幽霊地蔵のある浄土宗開運山来迎院 光福寺は1879(明治12)年(芝区史では明治13年)、現在地にあった海峰山蓮乗院 相福寺と本芝(現在の芝4丁目東京女子学園裏手)にあった西応寺の末寺である紫雲山来迎院 源光寺が合併し、源光寺の光、相福寺の福をとって「光福寺」の寺号としました。
この合併について現住職のお話では、
「廃仏毀釈の影響から同一宗派(浄土宗)であったため合併を余儀なくされた。」
としています。
1940(昭和15)年[皇紀二六〇〇年]に作られた芝区史では、
光福寺
元相福寺と称したが、明治13年本芝一丁目の源光寺を合併して今の名に改めた。寺内に幽霊地蔵なるものがあって、「お化寺」 の異名で聞こえている。
としています。
東都歳事記に掲載されている「江戸南方四十八地蔵参り」では、
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子安栄地地蔵尊
通称:幽霊地蔵 |
江戸南方四十八所地蔵参、此四拾八所参、
南方山の手東方ともに「地蔵巡拝道しるべ」と題し、
寛政六年梓行せる物を以て記す。
10番に相福寺が延命地蔵で、また24番では源光寺がやはり延命地蔵で掲載されています。
そのそも幽霊地蔵はどちらのお寺にあったものなのかを現住職にお聞きすると、源光寺に伝わっていたとの事でした。これからすると前述の江戸期の昔話は不可能になります。
また住職のお話では、
明治初期に合併するまで源光寺にあった幽霊地蔵は海辺の砂や風雨にさらされて風化し、次第に摩滅していったためこのような姿になったと思われる。江戸期の往還には一定の間隔で地蔵が安置され一里塚的な要素も持っていた。
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子安栄地地蔵尊
通称:幽霊地蔵 |
しかし、元々源光寺にあり有名であった地蔵が現在伝わる「幽霊地蔵」と同一のものかは不明で、後年その高名にあやかって作り直しているのかもしれないが、一切の記録が無く口伝でしか伝わっていないので詳細は不明。
とのことでした。
江戸期の源光寺について御府内寺社備考で調べると、境内に地蔵堂がありますが、残念ながらそこに安置されていたのは高さ一尺三寸ほどの地蔵菩薩木立像で、幽霊地蔵ではなかったようです。さらに敷地図から境内を確認してみましたが、幽霊地蔵の記述はありませんでした。
江戸期最大のゴーストバスターといわれる
祐天上人は増上寺三六世を引退した後、麻布暗闇坂の増上寺隠居所に隠棲します。しかし、まもなく三七世も隠棲することとなり、祐天上人は暗闇坂の隠居所を辞退し当時増上寺の末寺であった西応寺に隠棲することとなります。その西応寺の末寺に「幽霊」地蔵が伝わっているのは偶然ながらも興味深いつながりがあるとも想像されます。
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江戸期の源光寺 |
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江戸期の紫雲山来迎院 源光寺
(御府内寺社備考) |
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江戸期の相福寺 |
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江戸期の海峰山蓮乗院 相福寺
(御府内寺社備考) |
江戸南方四十八所地蔵参り
No. | 寺 号 | 場 所 | 地蔵名 |
1. | 祐天寺 | 目黒 | 延命地蔵 |
2. | 長泉院 | 目黒 | 延命地蔵 |
3. | 蟠龍寺 | 目黒 | 願満地蔵 |
4. | 願行寺 | 南品川 | 地 蔵 |
5. | 法蔵寺 | 高輪 | 病治地蔵 |
6. | 浄業寺 | 高輪 | 夜深地蔵 |
7. | 常光寺 | 高輪 | 子安地蔵 |
8. | 長円寺 | 二本榎 | 日限地蔵 |
9. | 松光寺 | 二本榎 | 子安地蔵 |
10. | 相福寺 | 二本榎 | 延命地蔵 |
11. | 最上寺 | 目黒下屋敷 | 日除地蔵 |
12. | 正福寺 | 目黒下屋敷 | 女体身代地蔵 |
13. | 遍照寺 | 麻布新町 | 地 蔵 |
14. | 長松寺 | 三田下寺町 | 身代地蔵 |
15. | 随応寺 | 三田下寺町 | 子育腹帯 |
16. | 大松寺 | 三田下寺町 | 堅田地蔵 |
17. | 貞林寺 | 三田中寺町 | 延命地蔵 |
18. | 称讃寺 | 三田中寺町 | 豊岡地蔵 |
19. | 大増寺 | 三田台町 | 地 蔵 |
20. | 正泉寺 | 三田台町 | 延命地蔵 |
21. | 願生寺 | 高輪牛町 | 朝日地蔵 |
22. | 智福寺 | 芝田町 | 子安地蔵 |
23. | 西信寺 | 芝田町 | 子返地蔵 |
24. | 源光寺 | 芝薩摩河岸 | 延命地蔵 |
25. | 西応寺 | 本 芝 | 地 蔵 |
26. | 花岳院 | 増上寺中 | 火消地蔵 |
27. | 妙定院 | 増上寺山下 | 勝軍地蔵 |
28. | 心光院 | 芝赤羽 | 踏履地蔵 |
29. | 順了院 | 飯倉土器町 | 女体身代地蔵 |
30. | 大養寺 | 芝西久保 | 塩地蔵 |
31. | 栄立院 | 天徳寺中 | 地 蔵 |
32. | 宝瑞院 | 天徳寺中 | 地 蔵 |
33. | 道源寺 | 麻布谷町 | 地 蔵 |
34. | 善学寺 | 麻布長垂坂 | 地 蔵 |
35. | 教善寺 | 麻布芋洗坂 | 塩地蔵 |
36. | 光専寺 | 六本木 | 延命地蔵 |
37. | 深広寺 | 六本木 | 地 蔵 |
38. | 教運寺 | 六本木 | 地 蔵 |
39. | 梅窓院 | 青山 | 楔(くさび)地蔵 |
40. | 長安寺 | 原宿 | 満米地蔵 |
41. | 崇源寺 | 鮫河橋 | 腹帯地蔵 |
42. | 法蔵寺 | 四谷 | 地 蔵 |
43. | 了学寺 | 箪笥町 | 地 蔵 |
44. | 心法寺 | 麹町 | 願満地蔵 |
45. | 龍泉寺 | 一ツ木 | 子安地蔵 |
46. | 浄土寺 | 一ツ木 | 延命地蔵 |
47. | 専修寺 | 赤坂新町 | 延命地蔵 |
48. | 法安寺 | 三分坂 | 蕃桝(とうからし)地蔵 |