2013年1月27日日曜日

徳川将軍家の麻布

麻布御殿」で五代将軍綱吉と麻布を紹介しましたが、今回も徳川将軍と麻布のつながりをいくつか御紹介します。

初代徳川家康は、麻布山善福寺に天正19年11月付けで朱印を授け、寺領の保護を誓約しました。また、この時の住職第14世堯海は家康と近しくしており、ある時家康が急に善福寺に立ち寄り銭十貫を求めたので直ちにこれに応じ、将軍となった後も善福寺は毎年正月6日に十貫を納め、将軍家からそれに時服を添えて返礼されるのが慣わしとなりました。

その後2代秀忠、3代家光も善福寺をたびたび訪問しましたが、とりわけ家光と麻布の繋がりは深かったそうです。


慶長10年(1605年)4月
家光2歳の時、生母で二代秀忠婦人お江与の方は、家光が安産で生まれた答礼に東福寺に本堂を建立し、家光の名で十二神将像を寄進しました。東福寺は東叡山の末寺で神田駿河台~上野広小路を経て天和3(1683)年から本村町薬園坂にありましたが、廃仏毀釈の影響から明治初年には廃寺となり、本堂は隣接する明称寺の本堂として売却され、十二神将像は目黒安養寺に移されました。東福寺薬師縁起によると十二神将像の後背には「慶長十年乙巳卯月(4月)吉日 源右大将若君御寄進」 とあり、源右大将とはこの像を寄進した同じ月の16日に伏見で将軍宣下を受けた父秀忠です。
寛永3年(1626年)10月18日
秀忠夫人お江与の方(崇源院殿)逝去。六本木にて荼毘に附し増上寺に埋葬。 

寛永16年(1639年)5月20日
家光、麻布でオランダ人による石火矢(大砲)の試射を堀田正盛、阿部重次、牧野信成らと観覧。  

寛永18年(1641年)8月
家光、麻布で鷹狩。  

寛永19年(1642年)11月
家光、麻布薬園にて馬を駆る。  

寛永21年(1644年)3月3日
家光、青山宿より麻布薬園にお成り。御膳所で御徒頭能勢市十郎を呼び、狸穴にある「麻布のむじなの穴」を調べさせました。  

正保4年(1647年)3月18日
家光、浅草を視察のため城を出たが、浅草観音の縁日である事を聞き、庶民の遊楽を妨げぬよう麻布に行き先を変更しました。  

正保4年(1647年)4月29日
家光、麻布で鷹狩。この時、麻布山善福寺に立ち寄り、麻布山に登り茶屋で弁当を食す。この茶屋は家康、秀忠も善福寺を訪問した際に使用されており将軍家用の茶屋でした。そして家光はこの茶屋を「栖仙亭」と命名しています。また家光は、善福寺訪問時に梅樹を植えたり、乗馬による騎射を楽しんだそうです。そして麻布山の山の形から亀子山と命名し、山号を麻布山善福寺から亀子山善福寺と改名させています。家光没後再び麻布山に戻りましたが、その時の片鱗が現在も善福寺内会館正面の額や手水舎などに見えます。  

元禄14年(1701年)9月3日
綱吉の実母本庄氏お玉(桂昌院殿)、宮村町増上寺隠居所を訪問。  

元禄15年(1702年)5月2日
綱吉、宮村町増上寺隠居所を訪問。  

元禄16年(1703年)9月8日
桂昌院殿、宮村町増上寺隠居所を訪問。  

元禄16年(1703年)10月18日
綱吉、宮村町増上寺隠居所を訪問。これ以外にも綱吉は度々増上寺隠居所を訪問しています。
麻布山善福寺オフィシャルサイトによると、家光は甲良豊後守に命じ当時の建築の粋を集めて本堂を建立し寄進したとあり、家光の善福寺に対する愛着が伺えます。 




徳川綱吉(wikipediaより引用)  








桂昌院(wikipediaより引用)











宮村町隠居所



甲良豊後守は、徳川家康以降将軍家に仕え、伏見城内の普請や吉田神社(左京区)造営の棟梁として活躍し、その功績により、豊後守の称号を賜りました。のち江戸に赴き、増上寺三門・台徳院霊廟・江戸城天守閣、日光東照宮などを手掛けた幕府作事方大棟梁との事です。また余談ですが、江戸城の虎ノ門は当時の善福寺の山門であり、杉並の善福寺池は当時の奥の院跡で麻布山善福寺の寺領であったとの事です。

文中の麻布の鷹狩は後に麻布御殿となる麻布薬園(南御薬園)にある将軍家鷹場が使用され、この他にも北御薬園(高田)、大炊台、隅田川、品川、小菅、ほうろく島、王子、中野、葛西にも将軍家鷹場御殿があったそうです。 
家光はこれらの鷹場を頻繁に使用しましたが、家康、秀忠の数日を費やす大規模で軍事デモンストレ-ションを含んだ鷹狩ではなく、あくまでも自らの健康回復を目的としたスポ-ツ的な鷹狩で、ほとんどの場合1日で終了したといいます。

この他にも、西麻布に現存する長谷寺の開山宗関は、今川義元の嫡子氏直の三男に生まれ、かつて駿府での家康の禅の師範であったため家康入府後、江戸に招かれ家康・秀忠の崇敬を受けて慶長3年(1598年)長谷寺を開くなど、麻布と歴代徳川将軍家の因縁は深かったようです。